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特定一階段等防火対象物って何?

2022.01.06

2021年12月19日以降、総務省消防庁から全国各地の消防本部に対して緊急要請があり、今回の大阪市北区のビル火災(2021年12月17日発生)の建物と類似の、消防法施行令(昭和 36 年政令第 37 号)第4条の2の2第2号に該当する防火対象物(特定一階段等防火対象物)を対象に、火災時の避難経路等について緊急査察が行われています。

消防法施行令(昭和 36 年政令第 37 号)第4条の2の2第2号に該当する防火対象物 (特定一階段等防火対象物) 二 前号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条第一号に規定する避難階をいう。以下同じ。)以外の階(一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。以下この号、第二十一条第一項第七号、第三十五条第一項第四号及び第三十六条第二項第三号において「避難階以外の階」という。)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(建築基準法施行令第二十六条に規定する傾斜路を含む。以下同じ。)が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあっては、一)以上設けられていないもの

消防法第四条の二

つまり、避難に使える屋内階段が1つしかなく、1階2階以外の階にも特定用途部分(映画館や飲食店、介護老人保健施設等不特定多数の人や、避難に支障をきたす人が利用)がある建物です。

今回の緊急査察のチェックポイントは以下の内容です。

・避難経路となる階段等の施設に支障となる物品(荷物等)が置かれている場合
・防火戸の閉鎖の支障となる物品(ストッパーや荷物等)が置かれている場合

防火管理の実施状況や、消防用設備等の設置状況に係る消防法令違反がある場合は、重点的に改善指導を図ること。

実例

2001年の歌舞伎町ビル火災のビルも特定一階段等防火対象物でしたが、屋内階段には大量のごみ袋や衣装ケース、ビールケース等があり、避難の妨げになっていました。
また、防火扉も設置されていましたが、荷物や看板が障害となり閉鎖できない状況であったようです。
防火扉が閉まらないと、屋内階段が煙突の役割をはたしてしまい、更に被害が拡大します。
煙は炎より拡大する速度が早く、あっという間に広がります。炎は熱い為近寄りがたいのですが、煙は「走って煙の中を抜けてしまえば大丈夫だろう」と甘く見てしまわれる方もいらっしゃいます。

一酸化炭素中毒

火災時の煙には一酸化炭素が含まれており、一呼吸するだけで血液中のヘモグロビンと結合して、一酸化炭素ヘモグロビンを形成します。ヘモグロビンは酸素と結びつき全身に酸素を運ぶ役割をしていますが、一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っています。一酸化炭素ヘモグロビンになることで、酸素を運搬するヘモグロビンが減少し、体内組織へ十分な酸素を送ることが出来なくなります。一酸化炭素中毒になると、頭痛やめまい、場合によってはその場で倒れてしまい体が動かなくなることもあり、最悪の場合は死に至ります。

本当に怖いのは炎ではなく煙です。
万が一の際に、人命が失われることがないよう、日頃から避難経路や防火扉の前等に障害物がないかなどの確認はとても大事です。

特定一階段等防火対象物の設置規定

特定一階段等防火対象物では、少し特殊な消防設備の設置などの対応が必要になります。細かい規定は色々ありますが、主なものは下記になります。

自動火災報知設備は再鳴動方式であること
古い(1997年以前に製造・設置された)設備の場合、対応していないこともあります。 再鳴動式とは、受信機が火災信号を受信したとき、地区音響停止スイッチが停止状態にあっても一定時間内に自動的に停止状態を解除して鳴動状態になる機能のこと。後続の火災発生を報知することが出来ます。

・階段に設置されている煙感知器の設置間隔が半分であること
通常は高さ15m以内ごとに1個設置ですが、特定一階段等防火対象物の場合は7.5m以内ごとに1個設置。
1種~3種に分類される煙感知器の内、1種・2種のみ使用可能です。
1種:煙濃度5%で発報。超高度感知器。エレベータ昇降路の頂部等早期検出が必要な場所で使用されます。
2種:煙濃度10%で発報。一般的な火災警戒に使用されます。
3種:煙濃度15%で発報。通常、防火戸や防火シャッターを閉鎖するための感知器として使用されます。

・避難器具は一動作式のものであること
一動作式とは保安装置を外す動作を含まず、一動作で確実に使用できるもの。

・一年に一度、防火対象物点検の実施をすること
収容人数が30人以上の場合。

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